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2006年1月17日 (火)

阿闍梨さん

各地で大雨が降った週末、わたしは比叡山の巨木たちの中で、小さな折り畳み傘をさし、コートを濡らしながら、延暦寺の根本中堂へと向かっていました。

お友達のMさんに誘っていただき、千日回峰行を満じた藤波源信・阿闍梨さんにお会いするというご縁に恵まれたからです。

阿闍梨さんは松禅院という所にいらっしゃるのですが、そちらへお邪魔する前に、
現在特別開扉中の、伝教大師作・秘仏薬師瑠璃光如来を見ようということになったのです。

雨のせいか、境内には人影もまばらで、先がよく見えないほど白くもやがかかり、
まさに、霊山といった趣きです。

根本中堂は想像以上に大きかったので、薬師如来のお姿も遠かったけれど、
とても、優しく、穏やかな印象を受けました。

薬師如来に別れを告げ、雨の中、車は一路、松禅院へ。
人里離れたという言葉が似合うような、ひっそりとした山の中にたどり着きました。

運転してくださった方のハンドルさばきが見事だったので、安心でしたが、
わたしだったら、あんなに細くてくねくねした山道、とても運転できません!
もっとも、わたしはペーパードライバーなので、どんな道でも運転できないのですが(笑)。

kyoto_008わたしたちを出迎えてくださった阿闍梨さんは、優しい笑顔の、柔和な方でした。

千日回峰行を成し遂げた方と聞いて思い浮かべる、顔に深いしわをきざんだような、厳格なイメージとは大違い。お肌につやがあって、まるで青年のようなんです!

お座敷でお茶をいただき、お堂へ移動。
さっそく、護摩供の開始です。

護摩供は、穂高の初詣でも体験したので二度目。
小さなお堂ですが、護摩壇の上の天井が高くなっているので、
かなりの高さまで炎があがり、阿闍梨さんの力強いマントラとあいまって、
もの凄い迫力。

火の神の存在を感じずにはいられませんでした。

今は、オール電化住宅があるくらいですから、
日常で火を使う機会はめっきり減っています。

けれども、昔の人が、火に神の姿を見たように、火にはきっと、
心を暖かにしたり、不要な想いを焼きつくしたり、目に見えない力があるのでしょう。

護摩火が消え、これで終りかと思いきや、kyoto_013
「これからお加持を行います」

お加持って、加持祈祷の加持?

何をやるんだろう?

よくわからないまま、言われたとおりに、
目を閉じて手を合わせていると。。。

お護摩のときよりも、さらに力強い、阿闍梨さんの声、声、声。

そこに不動明王がいるとしか思えないほど、すさまじいエネルギーが、空間を揺らしていました。

思い浮かんだのは、先ほどお邪魔したお座敷にかかっていた、掛け軸の不動明王の絵(写真右)。

その不動明王が、燃えさかる炎を背にし、手に持った剣で、わたしの身体や心にからみついている、いらないものを、バッサバッサと断ち切ってくれている、そんなイメージでした。

それから再びお座敷へ戻り、阿闍梨さんとお話をさせていただきました。

あれほどの「気」を発していた阿闍梨さんですが、
お茶をいれてくださる表情は、別人のように穏やかです。

「千日回峰行を成し遂げたなんて、凄いですね」
と言うわたしたちに、阿闍梨さんはこうおっしゃいました。

「凄いことなんかないんです。修行は、昔から伝わるやり方を守りさえすれば誰でもできるし、7年経てば終わります。それより、家庭を守り、子供を育てている主婦の方なんかのほうがよっぽど大変だと思います。7年どころか、ずっと続くのですから」

この言葉は、決して謙遜ではなく、阿闍梨さんは、本当に、千日回峰行という偉業を成し遂げたことを、特別なことだとは思っていらっしゃらないのでしょう。

だからこそ、これほどまでに自然体で、親しみやすくていらっしゃるのだと思います。

「誰でもできる」とおっしゃいますが、
これほどの荒行を「やろう!」という決意、そうそうできるものではありません。
千日回峰行に挑んだ動機について、阿闍梨さんはこんな風に話してくださいました。

「まずは、ずっと続いてきたものを、絶やさずに伝えていかなければならない、ということがあります。ですから、その時々で、それができるところにいる人がやるわけです」

阿闍梨さんは笑顔でこう続けました。

「あとは、好奇心ですね」

帰ってきてから調べたことですが、千日回峰行は、下のような行程が定められているそうです。(流派(?)によって、距離など多少違うそうですが)

1~3年目  各年 1日約40キロ×100日間

4、5年目   各年 1日約40キロ×連続200日間

    700日終了後 「堂入り」・・・9日間 不眠、不臥、断食、断水

6年目    1日約60キロ×100日間

7年目    1日約84キロ×100日間(京都大廻り)
        1日約30キロ×100日間

この間は、どの時期に何を食べるかなど、細かく決められていて、
修行が進むにつれ、自分の身体がどんどん変化していくのがわかるそうなので、

「今年はこういう修行をやってこうだった。来年はどうなるだろう?」
という気持ちになるとか。 

普通なら到底無理だと思える、9日間、水さえ飲まない「堂入り」の間には、
皮膚から水分を吸収するようになるのだそうです。

お話を聞いていると、確かに、「少しずつ慣らしていけば、自分にもそんなことが可能になるのだろうか?」という好奇心が湧いてきます。

「好奇心」

阿闍梨さんのお話の中で、もっとも心に残ったのがこの言葉です。

何かを成し遂げつつ、その地位に溺れたり、踊らされたりすることなく、
自然体で、幸せに生きている人、
そんな人たちの共通点は、「行動の源は好奇心」だと言えるのではないでしょうか。

好奇心を原動力として、自分の可能性をどんどん広げていく人たち・・・

そんな人たちを思い浮かべていたら、ある考えに思い至りました。

スポーツの世界では、絶対に破れないと思われていた記録も、ひとりが破ると、
それに続く人が次々と現れる、ということがあるそうです。
つまり、見えない世界でわたしたちは繋がっていて、
ある人の得た知識や能力が、直接、出会ったり伝えたりしていなくても、
他の人に影響を与えているのではないかということです。

そして、千日回峰行にも、そのような働きがあるのではないかと思ったのです。

斜めに見れば、「ひとりが苦行を成し遂げたからといって、世の役に立つのか?」
と言うこともできるかもしれません。

けれども、ある人が千日回峰を満行したということは、人間の持つ生命力と精神力の強さを証明し、それを、人類の無意識の集合体に働きかけているような気がしてならないのです。

千年前とは、食生活も生活様式も大きく変わり、わたしたちの体は、昔の人よりヤワになっているはずですが、本来的な生命力は、千年前の人と変わらない、ということを、
千年前と同じ荒行を遂げることによって、わたしたちの潜在意識に訴えてくれる人、それが、阿闍梨さんなのではないでしょうか。

帰宅してから読んだ、藤波阿闍梨さんのインタビュー記事に、こんな言葉がありました。

「行者は変わっても修行の中身は変わらない。

地元の人たちは個人名ではなく、単に『阿闍梨さん』と呼ぶ。

個人名は関係ないんです」

通常、わたしたちは、「個」を差別化させるために、何かを成そうとします。
何かを成し遂げることによって、「個」としての自分の名を、歴史に残そうとするのです。

けれども、阿闍梨さんの場合は逆なのです。

千日回峰満行という、偉業を成し遂げることによって、
藤波源信さんという「個」から、個人名のない、阿闍梨さんになるというのです。

阿闍梨さんが、「京都御所への土足参拝をも許された、高僧、大阿闍梨様」
というような肩書きを感じさせず、自然体でいらっしゃる理由が、
少しわかった気がしました。

「個人名がない」と言っても、己を殺して世のために尽くすような、
「滅私奉公」ではありません。
だって、源にあるのは、「好奇心」なのですから。

阿闍梨さんが、「自分にできることだから」とおっしゃって、kyoto_025
用のない限り毎日なさっているという護摩供についても、

「毎日、火に変化があるんです。同じ火はありません。

だから、毎日続けられるんです」

ここにも、「今日はどんな火なんだろう?」という好奇心があったわけです。

帰り際に、どうしても聞いてみたかったことを、質問しました。

「この絵は、どなたがお描きになったのですか?」

お座敷の掛け軸の不動明王です。        kyoto_030
この絵から、強いパワーを感じたので、
どなたが描いたのか、気になっていたのです。
もしかした、高名な方かも・・・と。

阿闍梨さんの答えは、こうでした。

「この絵ですか?わたしが描きました」

お手本を見て描かれたそうですが、パワーを感じたのにも納得です!

阿闍梨さんとお別れし、車に乗る直前、みなさんを待たせてはいけないと思って、あわてて撮った1枚が、右の写真。

これって木霊!?

「もののけ姫」で見たような。。。

それとも、雨粒の反射したものか何か?

写真に写ったものが何なのかはわからないけれど、阿闍梨さんの住む山には、きっと木霊がいることでしょう。



        

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コメント

水咲さん、とっても上手に文章をまとめられていて、あの日のことがよみがえりました。
阿闍梨さんの素晴らしさが伝わってきます。
あのやわらかい、やさしいエネルギーに包まれると、心が本当になごみますね~

投稿: マリリン | 2006年1月18日 (水) 22時14分

すごいすごい経験したんだね^^。
なんだか興奮と荘厳な雰囲気が
ビンビンに伝わってくるよ。
深い経験だね~~~。良かったね。

和尚さんの名前、
あじゃりさんて読むの?
あのあじゃりさんかしら?
昔清水寺で修行中の、走りまくっていた彼に
偶然あった事がある。
それにしても水咲ちゃんとは不思議な
シンクロ。
比叡山のふもとで、レイキの合宿してたの。
あの、あーたんのとき。

投稿: ruru | 2006年1月18日 (水) 22時16分

あの阿闍梨さんにお会いされたのですね~!!
あちこちで、ご高名は伺うことがありましたが、日記の4枚の写真に水咲さんのこの日の体験が凝縮されているように感じられます。

比叡山・・・・11月上旬に学会で京都・大津へ行ったとき、叡山電車の入口に宿をとっていました。なんかとすっごく居心地がよかったなあ。

投稿: まる | 2006年1月18日 (水) 22時49分

>マリリンさん

あたたかいコメント、ありがとうございます!
頑張った甲斐がありました。

こんな素敵な体験ができたのも、マリリンさんのお陰です!
阿闍梨さんの素晴らしさは、言葉では語り尽くせませんが、ほんの少~しでもお伝えできればいいな~と思って書きました。


>ruruさん

阿闍梨さんは、「あじゃりさん」であってます。
9日間の「堂入り」を終えると、「阿闍梨」となって、千日回峰を満じると、「大阿闍梨」となるみたい。

阿闍梨さんが走っているのを見たなんて凄いね!わたしも見てみたいよ!!
でも、わたしのお会いした藤波阿闍梨さんは、
しばらく前に満行されてるから、また別の行者さんかな?どっちにしても凄い!


>まるさん

まるさんも、比叡山のお近くまで行かれたんですね。今度は、ぜひ、山の中へも!
わたしも、延暦寺は、根本中堂しか見ていないので、他も回ってみたいです。

あ、宿泊できる、延暦寺会館もとってもキレイで良さそうでした♪

投稿: 水咲 | 2006年1月18日 (水) 23時09分

同行させていただきました者です。みさきちゃんアドレスをありがとう!

阿闍梨さんの加持の迫力はいまだ鮮明です。あとのお話もほんとによかった☆素晴らしい文章をありがとう。

投稿: みちこ.jp | 2006年1月20日 (金) 01時23分

本日(3/4)松禅院に出かけ、護摩供、阿闍梨様のお加持を受けた後お居間にて談笑しておりましたら、「ちょっと待ってて下さいよ面白い写真が有りますので」と言って奥の間から写真をもってこられ、拝見しましたところ少し前にこの花の岬に乗っていた画像でびっくりしました、阿闍梨様も「この辺りは、昔のままなので木霊がいるんでしょうね」と感心されてました。
阿闍梨様と皆様のお写真も失礼ながら拝見させていただきました。
私も松禅院辺りの風景をここ3,4年撮っていますが、このような不思議な写真は、ありません、心が澄んだ方でないと、撮れないように思い感心しています。
とりあえずビックリしたので、ご一報させてもらいます。

投稿: tjパパ | 2006年3月 4日 (土) 21時52分

>tjパパさま

ご訪問ありがとうございます!
お返事遅くなりまして、失礼いたしました。
私が阿闍梨様にお送りした写真をご覧になったのですね!
不思議なご縁ですね。ビックリしました。
これも木霊さんのお陰でしょうか?
私もまた、松禅院へお邪魔したいです。

投稿: 水咲 | 2006年4月 6日 (木) 18時45分

水咲さん 初めまして通りすがりの者です

早速で失礼ですが
大阿闍梨さまの住所がわかるような固有名詞は 書かれないほうがよろしいのではないでしょうか
大阿闍梨さまがどれほど偉大な方か
また価値もわからない人が
大勢押し寄せ ご迷惑かけてしまう恐れがあります
それから このブログすぐにヒットしたと言うことは
誰でも不特定多数が見ると言うことを考えていただければ幸いです

大阿闍梨さまを 敬う 通りすがりより


投稿: 通りすがり | 2008年2月 4日 (月) 22時01分

>通りすがりさま

はじめまして。ご訪問、そしてコメントありがとうごさいます。

ご指摘いただきました件、慎重に検討いたしましたが、
昨年末に発行され、拝読させていただいた大阿闍梨様と帯津良一先生の著書、
「いのちの力」にも、地名が記載されており、
同書を紹介するインターネットのページにも、同様の紹介がなされていることから、

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/pocketpc/wsea.cgi?W-ISBN=476678409X&TCODE=BDB
現在のところは、今まで通りの表現をとらせていただくことに致しました。

細々と続けているサイトでも、
多くの方の目に触れる機会があるということを肝に銘じ、今後もサイトの管理運営に努めていきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い致します。

この度は、貴重なご意見をありがとうございました。

投稿: 水咲 | 2008年2月 5日 (火) 22時25分

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